ISUKE INC. | イスケ・インク

Communication Design | コミュニケーション・デザイン

Director | Gaku Okubo/大久保學

商品開発支援の例 -「香摘み」

玉露焼酎「香摘み」 紅茶焼酎「香摘み」
パッケージ
デザインを通じて

「開発コンセプト」の実現

katsumi_vert_0008.jpg自然の恵み、素材そのままの香りにこだわった「香摘み」。摘みたての香り豊かな茶葉(玉露/ダージリン紅茶)と、北海道大雪山系の清冽な仕込み水でゆっくりと丁寧につくられた、まろやかな味わいの焼酎です。鍛高譚(たんたかたん)のヒットで知られるオエノングループ(製造/合同酒精)から、まず玉露焼酎が、続いて紅茶焼酎が発売されました。どちらも乙類焼酎です。
画像は最終デザイン(クリックで拡大)

最初のオリエンテーションから、自然の恵みの力を大切に生かしたい、立ちのぼる素材の香りをとことん追求したい、との製造上の基本コンセプトが明確でした。ユーザーへ自然の恵みのエッセンスで穏やかなくつろぎの時を提供したい。思いやりをこめ安全で安心できるをものを届けたい。などなど、ブランド構築へ向けたフレームもほぼ固まりつつある時点から参加させていただきました。また、こだわりを持つ女性ユーザーを意識し、既存のオジサンくさい焼酎のイメージからは離れた商品にしたいという、新しいものに挑戦するという開発チームの強い意欲が伝わりました。

「掘り下げ続ける」ということ

デザインを進めるにあたって、この商品の一番の独自性である「茶葉」を使った「香り」が楽しめる、ことをどう伝えるかということに主眼をおきました。形状 の新しさの追求は、もちろんですが、女性ユーザーからの好感度を獲得するという目標は、特に留意するようにしました。初期の数次にわたるラフによる提案、 フィードバック、モック製作、ボトルの製造工程上の技術的な実現性と制約の確認、など数方向の案について改良や修整を重ねる作業をくり返したのです。
左)第一次提案のデザイン案 右)調整過程の実寸モック
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一方、当初から一の矢「玉露焼酎」にとどまらず、二の矢を放つブランド拡張戦略が決まっていましたので、玉露以外の素材でも成立するデザインであることも強く留意しました。このことに縛られると、かなりジェネリックな形状に陥りやすいものですが、なんといっても、商品そのものの独自性の根拠が強い筋の通ったものであったため、最終的なデザインに反映することを実現できました。

消費者の目線を忘れないこと

ktm_glass_150.jpgフィードバックの中では、例えば、思いやり、という開発思想をデザインにも反映させたい、というオーダーがありました。お応えするべく、ユニバーサルデザインの発想をとりこみ、当初の案では「葉/立ち上がる香り」のモチーフとして削りこんだカーブの意匠が単独であったものを、対角に配すことで、持ちやすさを向上させました。

また、オリエンを受けて以来、当該ジャンルの商品を数多く入手しての比較検討、飲用が想定される環境で魅力的に見える商品の差はどこに出るのかといった、ユーザー目線での調査検討はかかせませんでした。幸い、商品ジャンルが「酒類」でしたので、つらい作業ではありませんでした。商品によっては、使用機会が限定されるものなども存在しますし、異性では消費者になれない場合もあります。ちなみにそうした場合では、直接の利用ではなく、競合商品のマーケティングデータやサンプル調査のデータ分析をもとに、想像力と創造力をフル稼働させます。

調査と開発の熱(一般論を含めての付記)

この案件でもそうでしたが、新商品開発では販売までに当然課せられる「テスト調査」というハードルも越えていかなければなりません。想定ユーザーによる定性調査、定量調査は開発中数次にわたって行なわれる場合もありますが、込めた狙いが高く評価されればこしたことはないのですが、なかなかの難関です。開発に関わる人間が大勢で考えに考え抜いても、見落としていた盲点やマイナス要素が次々に浮上し、出口の見えない迷路に入り込んだりします。逆に好スコアで進路を選ぶと、広く明るく安全なはずが、誰も通らない道だったなんてこともあるわけです。

業界誌の記事で多様なメーカーのブランドマネージャーのアンケート結果を見たことがありましたが、ブランドマネージャーに一番必要なのは、決断する「度胸」といった内容だったと記憶しています。確かにヒットする商品の開発リーダーには、豊かな経験や秀でた理論構築力だけではない、勇気とか、胆力とか、つまりは度胸の備わった人がいらっしゃいます。

新商品に緻密なマーケティングは不可欠ですが、やはりなんと言っても開発できる技術力、考えられる限りを尽くす担当チームの情熱、前線の営業部隊の前向きな努力、広報や広告での真摯な工夫という、関わる企業の方々の「熱量」こそが、外部関係会社の人々のモチベーションを上げ、最終的には消費者に対しての商品の力になるのだと思います。やや情緒的な表現ではありますが、商品のゆるぎない魅力というのは、デザイン以前にそうした企業の熱の総量が源泉だと考えます。おかげさまで、この香摘みのプロジェクトで「熱」をもった担当者と関係者の方々のお手伝いできたことは、そういう観点からもありがたいことでした。デザインは開発コンセプトのラッピングであり、そのコミュニケーションは商品の好イメージ獲得への方向付けが使命です。最終的なブランドの確立=ユーザーの満足や愛着の根源は、商品の中身に込められた開発の知恵と情熱からもたらされるとイスケ・インクでは考えております。

ktm_logo270.jpg「実感」できること

この香摘み、百聞は一飲に如かず、です。どちらもそれぞれ、実に佳い香りが楽しめます。マーケティングの戦略として、酒屋さんでの流通経路にはのっていません。おいしい料理が楽しめる料飲店で実際に味わって納得してもらうことからの成長展開を図っているのです。香摘みに出会えるお店の情報や楽しみ方などはブランドのホームページに紹介されています。知人からも意外なお店で楽しんだという知らせもありますが、香摘みを置くお店は着々と増えているようです。また、新宿三越にあるオエノングループ直営のショップ(下記)で、購入することも可能です。是非、一度実感して楽しんでいただけたらと思います。(ボトルデザイン&ロゴデザイン・記/大久保学 イスケ・インク)

クレジット
商品/玉露焼酎「香摘み」&紅茶焼酎「香摘み」
クライアント/オエノン・ホールディングス
製造元/合同酒精
代理店/読売広告社
モック制作協力/信栄社


直営店で入手可能
プレズィル・ドゥ・オエノン
新宿三越 アルコットB2F
バーカウンターのあるオエノングループ直営のリカーショップです。香摘みを始めとする焼酎はもちろんですが、ワインの品揃えもたいへん充実しています。


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